卒業生に贈る

わが卒業生に贈る

(震災の年に卒業した事に深い使命がある事を忘るな)

震災の年の卒業した事を忘れまい!

 

 

 

 

 

 

 

16世紀、ポルトガルの詩聖カモンイスは謳いました。

「新しき世の 魁(さきがけ)にならん」

「ひた進みに進む 我をこそ 見よ」

苦難を恐れず、勇敢に前進しゆく誇り高き皆さんを、

世界の友が満腔(まんこう)の期待を込めて、見つめております。

卒業は一つの到達点であります。それにもまして未来への出発点であります。

私は、人生の師・戸田城聖先生から一対一の個人教授で学びました。

この「戸田大学」には、いわゆる卒業式はありませんでした。

いな今も毎日が、戸田大学の「学問即人生」「人生即闘争」の出陣と思っております。

私は、わが愛する卒業生の一人一人と、「これからも一緒に偉大な歴史を創り残そう」

と心で固い握手を交わしながら、三つの指針を贈りたい。

いよいよ学べ

第一は、乱世だからこそ、いよいよ学べ! 学びぬけ! ということであります。

今、私は、中国教育学会の顧明遠(こ めいえん)会長と対談を重ねております。

大中国の青年育成の黄金柱(おうごんばしら)であられる顧会長は語っておられました。

それは、「この瞬間も大きく変化している社会において、ただ学ぶということだけが、

新しい創造を生み、不敗の地に立つことができるのです」と。

まったく同感であります。

これから取り組む仕事もすべて勉強です。

「学ぶ」という命の構えが確立した人は、どんな苦しい現実に直面しても、

その苦悩にひきずられてしまうことはありません。

一切を、自らの向上と創造と勝利のバネに転じられるからです。

「英知を磨くは何のため」___

この青春の原点を胸に、使命の現場に勇んで飛び込みながら、

たくましく働き、生き生きと学び続けていってください。

小才(こさい)や要領(ようりょう)では長続きしない。

労苦を惜しまず、誠実に努力を貫き通す人が、最後には必ず勝つのであります。

協調の力を創れ

第二には、仲良く協調の力を創り広げるリーダーシップを!という点であります。

このたびの東日本大震災に際し、

亡くなられた方々のご冥福をあらためてお祈り申し上げるとともに、

被災者の皆様方に心からのお見舞いを申し上げます。

世界中の友からも真心の励ましのメッセージを頂戴しております。

友情は本当にありがたいものです。

その一人、アメリカの未来学者のヘンダーソン博士は、心を一つに大災害を乗り越えゆく

創価の人間主義の連帯を讃え、記してくださいました。

「軍事の力や経済の力より強大なものこそ、人間の力であります。その人間の力を

発揮するために、何よりも不可欠なものは、人々が共同して事にあたることです。

軍事の力、経済の力が競争の力であるのに対し、

人間の力は協調の力であるからであります」と。 

?至言であります。

私が交友を結ぶ各界のトップの方々からも、よく賞賛いただくのは、協調のチームワーク

を創り出せる「和の力」であります。

この協調の力を、時代はいやまして要請しています。皆さんは、ますます聡明に清々しく

現実社会で生かしていただきたいのであります。

粘り強くあれ

第三には、粘り強くあれ! 持続の力で勝て! と申し上げたい。

福島県が生んだ世界的な信念の歴史学者、

朝河貫一(あさかわかんいち)博士は叫ばれました。

「人は境遇に支配せらるる如き 弱きものにあらず」

「願はくば悲哀の下に屈せずして 悲哀の上に屹立(きちりつ)せよ」と。

その通りであります。

人間は、どんな悲嘆にも屈しない。一人も残らず、幸福を勝ち取るために生まれてきた。

乗り越えられない艱難(かんなん)は絶対にない。

試練が大きければ大きいほど、それに立ち向かって粘り強く戦い続ける。

そこにこそ、人間の「持続」こそ、幸福の泉であります。

「持続」こそ、勝利の光なのであります。

ともあれ、

未曾有の大震災の渦中に旅立つ皆さんの使命は計り知れません。

私がともに対談集を発刊した、インドの世界的な農学者で、平和運動の指導者でもある

スワミナサン博士は青春時代、ベンガル大飢饉を目の当たりにされました。

数百万人が犠牲になった大災害であります。

若き博士は、この悲惨を二度と繰り返してはならぬと立ち上がった。

そして遺伝学などの学問を究め、小麦や稲の画期的な品種改良に成功し、

7000万人もの命を飢えから救ったというのであります。

私がスワミナサン博士と語り合った、大教育者でもあるタゴールの詩を贈りたい。

「光をともせ 自らの光を 光の勝利のメッセージを 聞かせよ」

「光をともせ 自らの光を この暗闇に打ち勝て」

平和のフォートレス(要塞)たる創価大学が開学した時、私は43歳でありました。

皆さんは2030年、創価教育の100周年に、その働き盛りの年代を迎えています。

フランスの歴史家ミシュレが綴ったように「真の要塞(ようさい)とは堅固な人間」

であり、「揺るぎない人間こそ勝利の秘訣」であります。

どうか皆さん自身が揺るぎない平和の要塞となり、民衆が幸福と安穏に輝く世界を

築いていっていただきたい。

皆、体を大切に!

何があっても臆さず、へこたれず、良き宝の友と励まし合いながら、

朗らかに乗り切ってください。

負けじ魂で「今に見よ」と力をつけ、

立派な親孝行をして差し上げていただきたいのであります。

希望に光る「幸福姉妹」であり、勇気に燃える「勝利の旭日」である皆さんに____

きょうも、断固、一歩進め!

明日も、断固、一歩進め!

やがて、君の開きゆく道は、必ず黄金となって輝く時が来ると申し上げ、

私のメッセージといたします。

卒業生、万歳!

創立者のメッセージ「わが卒業生に贈る」より抜粋